【監修】島根県済生会江津総合病院
名誉院長 堀江 裕 先生(さくら友の会協力医(顧問))
助言 上出 良一*先生 足立 智英**先生
* ひふのクリニック人形町 院長(さくら友の会協力医(顧問))
** 東京都済生会中央病院 総合診療内科・脳神経内科担当部長(さくら友の会協力医(顧問))
ポルフィリン症は難病法に定められている指定難病です(平成27年7月1日 指定番号254)
はじめに |
急性ポルフィリン症 |
急性ポルフィリン症型(略称) | 主な症状 |
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ALAD欠損性ポルフィリン症(ADP) | 消化器、精神症状、皮膚症状はない |
急性間欠性ポルフィリン症(AIP) | 消化器、精神症状、皮膚症状はない |
遺伝性コプロポルフィリン症(HCP) | 消化器、精神症状、皮膚症状 |
異型(多様性)ポルフィリン症(VP) | 消化器、精神症状、膚症状 |
患者尿(AIP)
対象尿(健康成人)
図1.AIP患者の尿(文献1の図3から転記)
皮膚型ポルフィリン症 |
皮膚型ポルフィリン症型(略称) | 主な症状 |
---|---|
晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT) | 皮膚症状、肝障害ともに強い |
肝性骨髄性ポルフィリン症(HEP) | 皮膚症状強い、肝障害 |
先天性骨髄性ポルフィリン症(CEP) | 皮膚症状、赤色尿、赤色歯牙、高度肝障害 |
赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症(EPP) | 皮膚症状、肝障害 |
✕連鎖優性プロトポルフィリン症(XLDP) | 皮膚症状、肝障害 |
図2色歯牙(2歳・男児)文献2口絵18から転記
図3(文献図6から転記)
旅行中大量の日光暴露により、灼熱感を伴った露出部の浮腫性紅斑、水疱、壊死性痂疲を生じた、肝障害を伴う、文献3の図6から転記
●運動会、水泳、遠足、サッカーなどの屋外運動で日光暴露後、顔面や四肢など肌を露出している部分にかゆみやチクチクする痛みからはじまって、褐色の色素沈着、水疱、紅斑などがみられるようになります(図33))。成人以降にも同様な皮膚症状が出現します。誘因は太陽光線(紫外線・可視光線)への暴露です。
●赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症患者(EPP)の10~20%に肝障害がみられます。肝障害が悪化した場合には、肝移植が行われていますがドナーがみつからないため死亡した例もあります。
患者数 |
日本でのポルフィリン症患者の人数は正確には分かりませんが、厚生労働省が公表している難病法に定める医療費助成を受けている患者数を年度別に表3に、指定難病に指定された平成27年末から令和3年度末現在に医療費助成を受けた者の合計を図4にまとめました。指定難病に指定された以降、年々医療費助成を受ける患者が増えています。
表3-1.ポルフィリン症患者の難病法に定める医療費助成受給者数の推移
おわりに |
2009年の1年間に医療機関を受診したポルフィリン症の推定患者数は約208人(急性ポルフィリン症:約35人、皮膚型ポルフィリン症:173と報告4)されており、また、ポルフィリン症患者は10万人に1人5)といわれていますが、実態を把握できていません。
難病法に基づき医療費助成患者が増えているのは、医療従事者や一般の方にもポルフィリン症が周知されてきているのも一因と思われます。しかし、医療費助成患者数が増えているのは、遮光対策に理解が進まず重症化した皮膚型ポルフィリン症患者や、急性ポルフィリン症患者の一部の方が急性期に適切な医療処置を得らず慢性化したのではないかとも考えれられます。
近年、肝臓でのヘム合成経路の最初のステップである5’-アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)遺伝子のmRNAを標的として急性ポルフィリン症の症状を引き起こしているδ-アミノレブリン酸(ALA)やポルフォビリノーゲン(PBG)の濃度を低下させ、急性ポルフィリン症の急性発作の再発を予防したり、症状を緩和させる治療薬が開発され6)、臨床で使用されています5)。
また、米国で赤芽球性プロトポルフィリン症の患者に対して、メラニンを増やして皮膚の色を黒くすることで光線過敏症状を緩和する薬として、これまでの皮下に埋め込む薬に加え内服薬も開発中です7)
これらの薬剤がポルフィリン症患者の症状を緩和・緩解し、あるいは予防して明るい今日・明日を迎え、安心して暮らせる日が一日も早く訪れる日が来ることを切に望みます。
№1.堀江裕:急性肝性ポルフィリン症の病態と診断・治療の最新知見 ―ありふれた症状に潜む希少疾患の徴候―PROGRESS IN MEDICINE.Vol.41№9Prog.Med.2021-9. 85~96
№2.三浦隆:皮膚型ポルフィリン症の臨床.ポルフィリン・ヘムの生命科学 東京化学同人・1995年5月10日
№3.上出良一:光線過敏症.日本医事新報.2,001年(平成13年)7月7日.№4028
№4.川田 暁:遺伝性ポルフィリン症に関する全国疫学調査(第1報).厚生科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)、「遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療の開発に関する研究」平成21年度総括・分担研究報告書P21~22
№5.堀江 裕 遺伝性ポルフィリン症の 全国での診断治療体制の確立の研究. 厚生科学研究費
補助金 難治性疾患克服研究事業 「遺伝性ポルフィリン症 :新病型の診断法と新しい診療ガイドラインの確立に関する研究」平成25年度総括・分担研究報告書 P29
№6.ギボシランナトリウム.薬品インタビューフォーム2022年1月改訂(第3版 Alnylam Japan株)
№7.上出良一先生からの情報、経口薬dersimelagon、2023年4月26日